発達障害の当事者の思考を理解する一冊:『発達障害が理解されにくいワケを自分で考えてみた』レビュー
発達障害を持つお子さんの行動や言動に対する理解を深めるために、著者の経験がマンガ形式で描かれた『発達障害が理解されにくいワケを自分で考えてみた』は、親としてぜひ読んでおきたい一冊です。この本を通じて、当事者の視点から見た発達障害の特性と、その背景にある思考過程がわかりやすく伝えられており、親が抱える「なんで?」という疑問を軽減する手助けをしてくれます。
発達障害のお子さんとの日々の「なんで?」を解消する一冊
発達障害のお子さんを持つ親にとって、子供の行動や言動が時折理解しがたいことがあります。私自身、小学生の子供が発達障害を抱えており、日常生活で突拍子もない(ように見える)行動や言動、時には癇癪や暴力行為に直面することがあります。私は発達障害に関する書籍や記事を読んでいるので、自分の子供の特性や対応方法について、一定の理解はしているつもりです。それでもいざ直面すると、「どうしてこうなるんだろう?」という疑問を抱き、辛い気持ちが湧き上がり、子供の真意を十分に理解できないことがしばしばあります。
そんな時に出会った本が、『発達障害が理解されにくいワケを自分で考えてみた』です。この本は、発達障害を抱える大人の当事者が、自身の特性によって周囲の人々とどのように軋轢を生じてきたのかをマンガ形式で紹介しています。
著者の経験から学ぶ、特性の理解
この本の魅力は、著者が経験した日常の出来事や、その行動や言動の裏にある思考過程が非常にわかりやすく描かれている点です。特に、親として役立つのは、大人である著者の視点から見た発達障害の特性の説明が、自分の子供の行動を理解する上で参考になることです。
子供の突拍子もない(ように見える)行動や言動にも、その裏には子供なりの何らかの理由や考えがあります。しかし子供はなかなかそれを言葉で上手に説明することができません。でもこの本では著者がどのような考えを経てその行動や言動をしたのかを、細かく説明しています。
例えば著者が23歳の時、車で母親と外出中に母親がコンビニに寄りたいと言います。快諾した著者はコンビニへ車を運転します。コンビニに到着した時、母親は著者に「車で待ってていいよ、すぐ戻るから」と言います。この言葉に著者は怒り、車のキーを地面に叩きつけました。
この時に著者は、「一人でコンビニへ行きたいの?なんで?」→「わかった!ダメな私と一緒に行動することを他人から見られるのが恥ずかしいんだ!」→「私のことを馬鹿にしている!」→「どうせ私のこと嫌いなんでしょ!!」と考えて、怒りに達したそうです。
私は著者の様子を見た時、はじめは「ああ、一緒に行きたい気持ちを伝えられないんだな」と思いましたが、著者の考えたことを知り、「馬鹿にしている」というところまで思っていたのかとびっくりしました。この場合は単に「一緒に行きたい?」のような問いかけではなく、あなたのことが大事ということを伝えるフォローも必要なんだろうなと感じました。
もちろん人それぞれに考えることは異なるとは思いますが、ある程度のパターン(認知のゆがみ、10パターン以上あると言われている)はあるようなので、自分の子供もこのように考えているのではないかと推測するのに役立つと思います。
親の負担を軽減する一助に
もちろん、発達障害の当事者である子供自身が辛さを感じているのは事実ですが、親や周囲の大人もまた、その行動にどう対処すればよいか戸惑い、感情的な負担を抱えることが少なくありません。私自身この本を読むことで、子供に対する理解が深まり、日々の接し方に少し余裕を持つことができるようになりました。
この本は、専門的な理論や難しい用語を使わず、日常的なエピソードをマンガ形式で紹介しているため、読みやすく、気軽に手に取ることができます。何度も読み返すことで、少しずつ自分の中に新しい気づきが生まれるでしょう。また同じ著者の『さよなら、死にたいぼっち』は著者が子供の頃から大人になり家庭を持つまでの困難やその乗り越え方が描かれていて、こちらもオススメです。
発達障害のお子さんを持つ親として、特性に起因する「なんで?」という疑問で苦しさを感じている方は、ぜひこの本を読んでみてはいかがでしょうか。周囲の理解を深めることで、子供との関わり方にも変化が生まれ、家庭内の負担が軽減されることを期待しています。